「…どうしたんですか、コタロウさん」

「ん〜?べつに〜」

「それよりも、読まないんですか?それ」


僕はコタロウさんが握ったままの青の書に目をやる。

すると、コタロウさんはなぜだか切なげに青の書に視線を移した。


「本当はすごく読みたいんだけど、実はわたし――」



はっとして目が覚める。


どうやら僕は、カバンを枕にして眠ってしまっていたようだった。

僕の胸の上には、開いた状態で伏せてある青の書があった。


ふと太陽の位置が西寄りに傾いているのに気づく。

スマホの時計を見ると、ここへきて3時間近くがたとうとしていた。


コタロウさんは…、いない。


『わたし、ずっとここにいたんだよ?なのに、涼太くん全然気づいてくれないんだもの』


あのコタロウさんは、…夢だったのか。