「…すみません」


僕がペコッと頭を下げると、なぜだかコタロウさんは笑った。


「いいのいいの。夢中になって本を読む涼太くんの横顔、嫌いじゃないから」


その瞬間、せっかく熱が引き始めた僕の頬が再びカッと熱くなった。


「あれ?顔赤いけど、どうかした?熱でもある?」

「…なっ、ななななな…ないです!」


コタロウさんが片手を自分の額に当て、もう片方の手を僕の額に伸ばしてきたから僕は慌てて体を仰け反らせて回避した。


「そう?それならいいけど。ちゃんと水飲みなよ」

「…はい、わかってます」


終始コタロウさんのペースで、なにもできない僕はいじけながらそばに置いていたペットボトルの水を飲む。


「そうだ。これ、どうぞ」


そう言って、コタロウさんがリュックから取り出して僕に差し出したのは白いカバーの文庫本。