コタロウさんは手を振ると、颯爽とペダルをこいでいってしまった。

僕は、小さくなっていくコタロウさんの背中を追うようにして出した手をゆっくりと下ろした。


…聞けなかった、コタロウさんの名前。

“ただの読書垢”と違って、“コタロウ”さんは呼びやすいけど――。


今度会ったら聞いてみよう。


そう自分に語りかけた。