「え…、で…でもっ…」

「…あっ、ごめん!もしかして、これって“セクハラ”になるのかな。それとも、年上からの圧で“パワハラ”?」

「いや…、それは…」

「やっぱり気にしないで…!直感的に思ったことが口に出ちゃっただけだからっ」


コタロウさんは照れ隠しで笑ってみせる。


「白の書、読めたらSNSにDM送るね。それでお互いの本を交換したらいいだけなんだし」


…気のせいだろうか。

そう言って微笑むコタロウさんの表情が少し寂しげに感じるのは。


「それじゃあ」


リュックを背負ったコタロウさんがカーキ色のミニベロにまたがる。

そのとき、僕の中の僕が語りかけてきた。


本当にこれでいいのか?

――と。


「あっ…あの!」


気づいたら、ペダルをこぎ出したコタロウさんを呼び止めていた。