「うん、ありがとう…!」


コタロウさんは、慌てて白の書とマイボトルをリュックに詰める。


せっかく出会った、那須川先生のファン。

コタロウさんだとわかったから、今ここで別れてもSNS上で連絡しようと思えばできる。


――でも。

本音としては、もう少し2人で話したかったな。


だけど、『また会いたい』なんて言ったら迷惑に違いない。

変な意味にも受け取られかねない。


学校では『本が友達』なんて言われてるこんな根暗な僕に、そんなこと言われても――。


「ねぇ、また会おうよ」


突然頭の上から降ってきたコタロウさんの声に、僕はうつむいていた顔を上げた。


「……え…?」


まるで、僕の心の中を見透かしたかのような言葉。


「せっかくリアルで那須川先生のファンに会えたんだもの。もっとたくさん語りたいじゃん」