初めはこの状況に違和感しかなかったけど――。

いつの間にか『青の書』のストーリーの中に入り込んで、夢中になって読んでいた。


内容は、主人公の孤独な青年が天真爛漫なヒロインの女の子と出会うところから始まる。

2人で夏ならではのイベントに出かけ、徐々に距離が縮まっていく青春恋愛。


しかし、ヒロインは忽然と姿を消す。

主人公は、ヒロインと約束した場所で彼女がくるの待ち続けるという少し切ないストーリー。



――どれくらいたっただろうか。

ふと視線を感じ、はっとして顔を上げる。


すると、僕のすぐそばでしゃがみ込み、右手で頬杖をつきながら僕のことを見つめているコタロウさんと目が合った。


「…なっ、…なんですか」


驚いて、とっさに顔が赤くなる。

そんな僕を見て、コタロウさんは柔らかく微笑む。