そんなこと言われなくたって、今から読むつもりでいた。


ようやく手にした那須川先生の『夏空の下、君を待つ』。

楽しみすぎて、家に帰るまで我慢できない。


「2人とも読めたら、青の書と白の書を交換しようよ。そうしたら、一度に2冊読めるでしょ?」


正直、白の書をこの人に譲ったとき、もう白の書は読めないと諦めていた。

だけど思わぬ提案に、一度に2冊読める喜びに僕は自然と頬が緩んでいた。


「わかりました。これくらいの厚さなら普段なら1時間くらいですが、那須川先生なのでじっくり読みたいので2時間はかかると思います」

「わかる〜。わたしもそれくらいで読めると思うよ」


まるで太陽みたいなまぶしい笑顔が弾ける。


「じゃあ、さっそく読みにいこ」


女の人はそうつぶやくと僕の右手首を握った。