* * *


「…念願!ようやく会えた…!」


同じタイミングでレジで会計をして、同じタイミングで書店を出ると、女の人はすぐに立ち止まって買ったばかりの白の書に熱いまなざしを向けていた。

少し大げさな気もするけど、その気持ち、わからないこともない。


「本当にありがとうね。キミのおかげだよ」

「いえ、僕はなにも…」


あまり女の子、とくに年上の女の人とはほとんど接したことがなかったから反応に少し困る。

そんな僕のことなんてお構いなしに女の人は話を続ける。


「今からさっそく読んでみようと思うんだけど、これ読めたらキミに貸すよ」

「…え?」

「キミも今から読むんでしょ?」


女の人は僕の顔をのぞき込む。


僕を試すように見つめる上から目線。

ニッと上がっている口角。


『もちろん今から読むよね?』と言いたそうな表情をしている。