「ずっと探してた本なのっ…」


――驚いた。

マイナー作家の那須川先生のこの小説を探し求めていた人が僕の他にもいたなんて。


「で…でも気にしないで!初めに手に取ったのはあなただから…!」


笑ってそう言うけれど、悔しさがにじみ出ているのがわかる。


「だけど、もともとは同時でした。それをあなたが先に譲ってくれて…」

「いいの、いいの…!きっと探せば他のお店にもあると思うから」

「ですが、僕も探して探してようやくここで見つけたので、たぶん…他にはないと思いますけど」

「…だよね」


その人はあからさまに肩を落とす。


「ここのお店がSNSに投稿した写真見て、背景にわずかに青と白の背表紙を見つけたから慌ててきたんだけど…」


僕と同じだ。


「でもでも、こればっかりは仕方ないから…!それは、キミが手にする運命だったってことで――」