「うん、うん、分かる分かる」
私は独り言を言いながら、フォローしてるアニメファンの発言にいいねをする。
このプリルさん、分かってる。配信終わっちゃったけど、vi○yは面白かったよね。
「姉さん? このアニメ、そんなに面白いの?」
スマホをポチポチしてると、弟が横から覗き込んできた。
「うん。SFアニメなんだけど、ポストアポカリプス的な? 機械生命体的な? そんなの大好きなんだ」
「語彙力あるのか無いのかさっぱりな感想だね」
「でしょ?」
「褒めてないから」
そう言って、弟は私に寄りかかってくる。ってか重い……この地味な嫌がらせ。直接的な反抗期暴力じゃないのが救いだが、こうやって地味に体力を奪ってくるんだよね。
――ピコーン
スマホの通知が鳴る。
お、プリルさんがリプくれたのかな?
『アイ○ツは?』
……えっ? 何? アイ○ツ?
プリルさんじゃない……これって……彼だよね。相互になったし。
このまま放置ってことになると、また面倒になるからなぁ……当たり障りないように返しておこう。
『……オススメ回は?』
『三十七話。円盤貸す』
レスポンスが早すぎる。それに三十七話……先が長い……仕方ない、そこまでコツコツと見るしかないか……円盤も貸してくれるってことだし。
「この怪しいリプ誰?」
弟は寄りかかりながら、私のスマホを覗いてくる。だから重いってば。胸板が当たるんだけど、意外に筋肉質なんだよね、揉むぞこの野郎。
「隣の席の人」
「ふーん……友達いたんだ」
「友達じゃないよ。隣の席の人だよ」
「……」
弟は私を憐れむ目で見ると、溜め息を一つ。
そのクソムシを見る目は止めてくれないかな? 地味に傷つくし本当にご褒美になったらお姉ちゃんの性癖歪みまくるんだけど? それに距離近いからね。その筋肉おっぱいとか気になるから。
と、そこで弟は私から離れて、隣のクッションに座った。考え込むように一瞬、視線を下にやる。
え? もしかして、私の視線見つかった? 別に胸板見てないからね!
必死な弁明を心の中で叫んでると、弟は少し躊躇した後に尋ねてきた。
「それはそうと、めぐちゃんはどんな感じ?」
「あ、めぐね。おっぱいかと思った」
「――は?」
っと、ヤバい。口に出てた。変態扱いされるから、急いで誤魔化さないと。
「め、めぐの時間、間隔が短くなってるってことだよね?」
「……うん、ここのところ、ずっとだよ?」
以前は三ヶ月から半年に一回程度、リバース・マジックを再読すれば主人公が形成されたものの、ここ最近は訪問の頻度が一ヶ月に一回程度まで多くなっている。
「今までこんなこと、あったかな……?」
弟は心配なのか、ちょっと不安そうな表情だ。
「うーん、私の覚えてる限りはないかな……小さい頃から安定してたはず……」
「間隔が短くなってきたのって、いつから?」
「……高校入った頃? いや、そこまで昔じゃないか……んー、あまり覚えてないけど、去年の秋くらいかな。徐々にだと思うから、はっきりとは覚えてないけど……」
これと言った出来事が原因ではないと思う。彼女の周りで、何か大きな事件とかは無かったし、そうじゃなきゃ最近まで気付かない訳はない。
「大丈夫? 突然、戻ったりとか……?」
「今までそんなことはなかったから、大丈夫……と言いたいところだけど」
「……もうそろそろ、無理になってきた……とか?」
「どうだろう……その可能性もあるけど……」
「はぁ……姉さんは頼りにならないね……」
心底がっかり、と弟はゴミを見るような目で見つめた。いや、ゴミは言い過ぎかな。軽蔑する目? 期待してない目? あ、うん、ゴミで良いです。
「でも……いずれはって……覚悟はしてたでしょ? それが来たのかな……」
私の言葉に、弟は静かに首肯する。
「……あまり乗り気しないけど、ちょっと聞いてみようか」
弟にがっかりされるのも、姉としての矜持が許さないし。
それに、今のめぐを作り出したのも私たちだ。さすがに放置は悪いし。
「え? 直接聞くの?」
「うん、そのつもり。でも本人も自覚ないかも知れないし、期待はしないけど」
「ちょっと、それはデリカシーがないんじゃ……」
「でもこの問題に私たちは深く関わってるし、今更でしょ?」
「……うん……そうだね……」
アンニュイな表情をする我が弟。うん、いいぞ。
「よし、ちょっと行ってくる」
「え!? 今から? 夜なのに!?」
「平気平気――あ、海も来る? お姉ちゃんに任せておいても大丈夫だけど」
めぐの家は母子家庭で、母親が帰ってくるのがいつも遅い。
なので、意外に自由が利く。加えて、私たちはめぐの母親から信頼されてるのもあり、行くと喜んでくれる。
「まぁ……昔は頻繁に泊まりで遊び行ってたしね。めぐちゃんのお母さんも喜んでくれそうかな?」
「今の時間はまだ帰ってきてないと思うけど」
「そうだね。うーん。姉さんに任せるのも不安だし、夜で危ないし……俺も行くよ」
そう言えば、めぐの家に行くのは久々かも。いつ以来だっけ……去年の夏以来かな……?
私たちは一階のリビングへ向かう。
「母さん、ちょっとめぐの家行ってくる」
今日はお目当てのドラマはやっておらず、お笑い番組を見ながらビールを飲んでる母親に声をかける。
「ん? 珍しいじゃない。こんな時間に?」
「うん……最近不安定みたいで」
「……え? そうなんだ……それは気になるね。あ、海も?」
「うん、俺も当事者だし」
主人公で上書きしてることは両者の親は知っているので、簡単に説明するだけで何が起こったのか察してくれた。
「それにしても、父さんはまた社畜? 最近見てないんだけど」
「うん、社畜だね。午前過ぎになるんじゃない?」
「「うっわ……」」
私と弟はドン引きしながら、外へ出た。
私は独り言を言いながら、フォローしてるアニメファンの発言にいいねをする。
このプリルさん、分かってる。配信終わっちゃったけど、vi○yは面白かったよね。
「姉さん? このアニメ、そんなに面白いの?」
スマホをポチポチしてると、弟が横から覗き込んできた。
「うん。SFアニメなんだけど、ポストアポカリプス的な? 機械生命体的な? そんなの大好きなんだ」
「語彙力あるのか無いのかさっぱりな感想だね」
「でしょ?」
「褒めてないから」
そう言って、弟は私に寄りかかってくる。ってか重い……この地味な嫌がらせ。直接的な反抗期暴力じゃないのが救いだが、こうやって地味に体力を奪ってくるんだよね。
――ピコーン
スマホの通知が鳴る。
お、プリルさんがリプくれたのかな?
『アイ○ツは?』
……えっ? 何? アイ○ツ?
プリルさんじゃない……これって……彼だよね。相互になったし。
このまま放置ってことになると、また面倒になるからなぁ……当たり障りないように返しておこう。
『……オススメ回は?』
『三十七話。円盤貸す』
レスポンスが早すぎる。それに三十七話……先が長い……仕方ない、そこまでコツコツと見るしかないか……円盤も貸してくれるってことだし。
「この怪しいリプ誰?」
弟は寄りかかりながら、私のスマホを覗いてくる。だから重いってば。胸板が当たるんだけど、意外に筋肉質なんだよね、揉むぞこの野郎。
「隣の席の人」
「ふーん……友達いたんだ」
「友達じゃないよ。隣の席の人だよ」
「……」
弟は私を憐れむ目で見ると、溜め息を一つ。
そのクソムシを見る目は止めてくれないかな? 地味に傷つくし本当にご褒美になったらお姉ちゃんの性癖歪みまくるんだけど? それに距離近いからね。その筋肉おっぱいとか気になるから。
と、そこで弟は私から離れて、隣のクッションに座った。考え込むように一瞬、視線を下にやる。
え? もしかして、私の視線見つかった? 別に胸板見てないからね!
必死な弁明を心の中で叫んでると、弟は少し躊躇した後に尋ねてきた。
「それはそうと、めぐちゃんはどんな感じ?」
「あ、めぐね。おっぱいかと思った」
「――は?」
っと、ヤバい。口に出てた。変態扱いされるから、急いで誤魔化さないと。
「め、めぐの時間、間隔が短くなってるってことだよね?」
「……うん、ここのところ、ずっとだよ?」
以前は三ヶ月から半年に一回程度、リバース・マジックを再読すれば主人公が形成されたものの、ここ最近は訪問の頻度が一ヶ月に一回程度まで多くなっている。
「今までこんなこと、あったかな……?」
弟は心配なのか、ちょっと不安そうな表情だ。
「うーん、私の覚えてる限りはないかな……小さい頃から安定してたはず……」
「間隔が短くなってきたのって、いつから?」
「……高校入った頃? いや、そこまで昔じゃないか……んー、あまり覚えてないけど、去年の秋くらいかな。徐々にだと思うから、はっきりとは覚えてないけど……」
これと言った出来事が原因ではないと思う。彼女の周りで、何か大きな事件とかは無かったし、そうじゃなきゃ最近まで気付かない訳はない。
「大丈夫? 突然、戻ったりとか……?」
「今までそんなことはなかったから、大丈夫……と言いたいところだけど」
「……もうそろそろ、無理になってきた……とか?」
「どうだろう……その可能性もあるけど……」
「はぁ……姉さんは頼りにならないね……」
心底がっかり、と弟はゴミを見るような目で見つめた。いや、ゴミは言い過ぎかな。軽蔑する目? 期待してない目? あ、うん、ゴミで良いです。
「でも……いずれはって……覚悟はしてたでしょ? それが来たのかな……」
私の言葉に、弟は静かに首肯する。
「……あまり乗り気しないけど、ちょっと聞いてみようか」
弟にがっかりされるのも、姉としての矜持が許さないし。
それに、今のめぐを作り出したのも私たちだ。さすがに放置は悪いし。
「え? 直接聞くの?」
「うん、そのつもり。でも本人も自覚ないかも知れないし、期待はしないけど」
「ちょっと、それはデリカシーがないんじゃ……」
「でもこの問題に私たちは深く関わってるし、今更でしょ?」
「……うん……そうだね……」
アンニュイな表情をする我が弟。うん、いいぞ。
「よし、ちょっと行ってくる」
「え!? 今から? 夜なのに!?」
「平気平気――あ、海も来る? お姉ちゃんに任せておいても大丈夫だけど」
めぐの家は母子家庭で、母親が帰ってくるのがいつも遅い。
なので、意外に自由が利く。加えて、私たちはめぐの母親から信頼されてるのもあり、行くと喜んでくれる。
「まぁ……昔は頻繁に泊まりで遊び行ってたしね。めぐちゃんのお母さんも喜んでくれそうかな?」
「今の時間はまだ帰ってきてないと思うけど」
「そうだね。うーん。姉さんに任せるのも不安だし、夜で危ないし……俺も行くよ」
そう言えば、めぐの家に行くのは久々かも。いつ以来だっけ……去年の夏以来かな……?
私たちは一階のリビングへ向かう。
「母さん、ちょっとめぐの家行ってくる」
今日はお目当てのドラマはやっておらず、お笑い番組を見ながらビールを飲んでる母親に声をかける。
「ん? 珍しいじゃない。こんな時間に?」
「うん……最近不安定みたいで」
「……え? そうなんだ……それは気になるね。あ、海も?」
「うん、俺も当事者だし」
主人公で上書きしてることは両者の親は知っているので、簡単に説明するだけで何が起こったのか察してくれた。
「それにしても、父さんはまた社畜? 最近見てないんだけど」
「うん、社畜だね。午前過ぎになるんじゃない?」
「「うっわ……」」
私と弟はドン引きしながら、外へ出た。