「……晃と咲羅は?」


 え、あ、皇太子様も知っているのね。
 まあ、それもそうか。雅哉さんが知っているのだし……。そのお兄様なら、ね。


 「咲羅が晃を連れてどこかへ。まあ、兄様はいつかまた、2人と会えるでしょう?」

 「……それもそうか。
 ……妃彩さん、」

 っ、え?

 「『さん』などとつけないでください……! 私は、ただの……落ちこぼれです。貴方様のような高貴なお方にそう呼ばれては、なりません」

 「……」


 ……わかって、頂けたかしら……?


 「……わかった。では、妃彩、と呼ばせてもらおう。妃彩も、楓と呼んでくれ」


 ……良か、った……。
 ……楓、様。


 「兄様。くれぐれも、妃彩と仲良くね」

 「無論、そうする」

 「そ? 良かった」


 ……この2人は、とても微笑ましいご兄弟。ああ……いいなあ。
 でも、私は、諦めるしかないの。だから……いいの。
 ……笑え。表情を崩すな。


 「妃彩、大丈夫?」

 「体調が優れないようなら医者を呼ぶが……」

 「っ、ぁ、全然大丈夫です!!」


 ……一瞬、バレたのかと思った。
 まあ、きっと気のせいよね。こんな私の些細な変化に気づいてくださるわけ、無いもの。

 そう、私は、まとめ、もうこのことについては考えないようにした。