ついたのは、一番大きい客室。
 ここに、皇太子様が……。


 「……失礼します……!」

 「……誰だ」

 「兄様、雅哉」


 その瞬間張り詰めた糸が解けた、気がした。


 「……入れ」


 ……き、厳しそうだな……。


 「君は……雅哉の婚約者……?」

 「はい。雅哉さんの婚約者になりました、椎名妃彩ですっ」


 ……き、緊張する……。


 「……」

 「……兄様、妃彩は噂とは違い──」

 「知っている」


 え。


 「弟の婚約者のことは、きちんと調べている。まあ……大丈夫だろう」


 そして、彼は、


 「君には、雅哉を任せられる。……うちの愚弟を、よろしくお願いします」


 ……と、スターチスのお花が生けられている花瓶を見ながら、告げた。



 って……え、なんで……!? 私は魔女かもしれなくて、王家とは決して混じってはいけないのに……。ここにいては、いけないのに。