ついに、婚約する日。


 「はああ〜……!!」


 ちょ、ちょっとだけ……緊張してきた……。


 「妃彩」


 妃海……。


 「うまくやりなさいよ」


 え?


 「はい……?」

 「何よ」


 え、いや、だって、そんな励ますかのような……。


 「ありがとう」

 「はあ!? あんたにありがとうって言われる筋合いなんて、無い、わよ!!!」


 妃海……ねえ……
 ───……なんで、そんなに悲しそうなの……?

 いや、気のせいかもしれないけれど……寂しそうな、悲しそうな、そんな表情をしている。
 私がいなくなるのが寂しい? 悲しい? ……なわけ、ない。
 じゃあ……なに? ありがとう、って言われたのが?
 ……まあ、気にしなくていいかな。妃海のことだし……聞いても教えてくれないだろうから。


 「……あんたが王家行くなんて信じらんない」


 ……妃海が行きたかったんだし、ね。そりゃあ、そうなるよね。私は行きたいわけでも行きたくないわけでもないし……。


 「また会いましょう?」


 そう言い放った妃海は、妖艶に微笑んでいた。