「……じゃあ、さ。本題に入るけど……妃彩は、俺との婚約、どう思ってる?」

 「どうって……。別に、良いことでしょう? 椎名家にとっても王家にとっても良い……あれ、王家にとっては良いと言えない?」


 こんな私とじゃ王家の品位が疑われるんじゃ……?


 「俺が良いから良いの。それに兄さんいるし。
 ……ねえ、妃彩は? 妃彩の気持ちは?」

 「私……?」


 私、か。……どう思ってるんだろう?


 「……嬉しいわよ?」


 だから、そう答える。雅哉さんに嫌われたら……私は……意味がないから。存在意義が、ないから。
 ……でも、そんなの聞かれたの……初めてだなあ。


 「嘘だ」

 「え」


 でも、嘘じゃ、ない。椎名家のためになるんでしょ? 椎名家に育ててくれた恩返しができる。良い、でしょ? 嘘じゃないよ。


 「椎名家って言ったよね。椎名家に得だ、って。……自分の家って、言わないんだね。……椎名家のこと考えて嬉しいって、言ったんでしょ?
 俺は妃彩を離したりなんてしないよ。だから、もう、椎名家になんか戻らなくていい。大丈夫」