……いらしたわ。もちろん、晃は連れてきてない。代わりに、なぜか川上さんがいるけれど。
 まあ、誰かいないといけないからね。……でも、使用人さん達のトップである川上さんがくる意味は……?


 「妃彩?」

 「はい、妃彩です。雅也様、ようこそ」

 「今回来ているのは椎名家当主にはくれぐれも内密にしてくれると嬉しいかな」


 はい、という……けれど、なんでお父様に言っていないのかしら……?


 「晃は元気かい? ……って、最初の話がこれじゃ嫌だね」

 「いえ。元気……だと思いますわ」


 ……私は、晃の全て……なんて知らないから、多分ですけどね。


 「そっか。良かったよ。……なあ、タメ口で話してくれないか?」


 え?


 「……立場が……」

 「頼む」

 「……では……雅也様、これからよろしく……ね」

 「雅也でいい」


 でも……呼び捨ては……。


 「雅也、さん……」

 「ん」


 ……なんだか、気恥ずかしい。


 「……きょ、今日はどのようなご要件でいらした───」

 「敬語。駄目だからね」


 あっ、忘れてた……。


 「ごめんねっ」