それにしても……遅い。もう、帰ってきてもいいはずだ。……怪我はないだろうか。……大丈夫だろうか……。


 「お嬢様っ」

 「晃、部屋……の前にいたのね」


 良かった、無事に戻ってきた……。


 「大丈夫でし……怪我が…!! ……今すぐ手当てを始めます。お部屋の椅子にお座りください」


 お嬢様、か。……こんな深い傷。


 「……お顔に傷が残るかもしれません」

 「大丈夫よ。痛くないし」

 これが、痛くない……? 痛みを感じない……? まさか、ね。

 「……終わりましたよ」

 「早くない?」

 ああ、気づかれてしまったか。

 「少し魔法を使わせて頂きました。私……治癒に特化した魔法使いなので」

 「……治癒って」

 「……はい」

 ……何を、言われるだろう。軽蔑される、か?

 「人を救うのに、本当に特化しているのね。凄いわ」

 「なんで、なんで、認めるんですか? どうして? 戦えない俺達は、どこまで行っても最下層なのに…!」

 「晃が認めてくれたから、だよ」


 俺が妃彩様を認めたのは……九割私情だ。一目惚れ、という。残り一割は、自分ができなかったことを、妃彩様にしてほしいから。……って、これも私情か。


 「……私の家庭は……いえ、ごめんなさい。まだ……言えません。いつか、言わせてもらいます」

 「大丈夫よ」


 まだ、流石に……言えない、か。