「出てきたの?」「全く、どういう神経してるんだか」「汚い」「生きてるだけで忌み嫌われる存在なのに」

 「……妃彩様……」


 ……なんで、妃彩様がそんな心無い言葉を浴びなければいけないんだ……。


 「……大丈夫よ」


 大丈夫じゃ、ないだろ?


 「……ダイニングに行きましょう」


 ……はい、と言う。俺は、きっとこの使用人たちに歯向かってはいけないのだろう。妃彩様が、もっと困ってしまう。


 「……ダイニングですって? お嬢様が……」


 お嬢様……? ああ、妃彩様の妹か。

 妃彩様は困ったようにしながらも進んでいく。一応、間取りは覚えてきているから、ここがダイニングだと思う、けれど。


 「……あちらがお嬢様ですか?」

 「ええ、そうよ」


 ……似ていない。双子なのに。まあ、二卵性なのかもしれないけれど。父親にも似てないぞ?母親にも。


 「……妃海様、お久しぶりです」

 「妃彩、生きていたのね」

 「はい。妃海様も御息災なようで」

 「あんたとは違ってね。
 ……全く、なんであんたが姉なのかしらね。同じ血だと考えるだけで吐き気がする」


 ……お嬢様も、妃彩様をいじめているのか? 姉を? なんで?


 「……」

 「……で、あなたは?」

 「私は妃彩様の新しい執事です」

 「へえ。こんな魔法が使えない子の執事って、嫌じゃないの? 一族の恥の執事で、恥ずかしくないの?」


 ……は?


 「……いえ、そんな事はありません」


 なんだ、こいつは。