「……お嬢様は、この環境から逃れたいと思ったことは無いんですか?」

 「……諦めがついてるから。逃れたい、とはもう思わないかな」

 「今は……ですか」

 俺だったら……諦めがつかないかな……。いつか、絶対復讐してやる、と心に誓って。

 「お嬢様、」

 「あ、お嬢様って呼ぶのはやめて。ここでお嬢様は、妃海の事になるから。本田さんが怒られてしまうわ。私をお嬢様、なんて言うと」

 「……妃彩様」

 ……差別、か。

 「はあい?」

 「……お願いです。本田さん、とお呼びになられるのは……。ただの使用人ですし。晃、と。そうお呼びください」

 「あきら……?」

 「っ……、はい。俺……私は別に、妃彩様が嫌い……というわけではないので。
 その、さっき言った悲劇のヒロインと……傷ついていないフリをしているところとか……嫌いです」

 俺は……特別体質なんだ。数少ない治癒魔法に特化している。……そして、未来が視える。だから……さっき、アレが視えたため、こう言ってしまった。
 『晃……? 私のせいでごめんね。いいよ、でてきな。私は大丈夫だからっ。なんとかするよ』