「妃彩、待たせたな」


 ……お父様が、いらっしゃった。


 「妃彩、良い話があるんだ」


 嫌な予感しか、しない。


 「縁談だ。しかも、雅哉(まさや)様。王家の次男だぞ?」


 ……縁談? 私が? 妃海じゃやくて? しかも、王家?
 ……王家の方が考えるのは、いつも、どうしてか分からない。


 「わかったか」

 「……はい」

 「妃海と楓様の婚約が今難航中でなぁ。お前が雅也様に気に入られていて良かったよ」

 気に入られている? 私と雅也様は会ったことも、無いのに?

 「まあ、あの方の趣味は分からんな。こんな魔法が使えない者が良いとは……」

 っ……。

 「……お前も、大人しく、操り人形になれば良いんだ。分かったか?」


 嫌、とは言えない雰囲気に思わず呑まれる。


 「は、い」

 そういえば……、晃とLiliaはどうなるの? 縁談ということは、あちらで過ごすことになるだろうし。

 「あの、私の執事と飼い猫は……」

 「あー、連れていけばいい。いると邪魔だからな」

 ……邪魔って、何よ……。

 「下がれ」

 「……はい」