「……奥様、私も付いていってよろしいでしょうか?」

 晃……!? 勝手に何して……!!

 「あら、あなたは?」

 「申し遅れました。妃彩様の新しい執事である本田晃と申します」

 「もちろんいいわ。主従そろっておいで」

 「「ありがとうございます」」


 ……はあ。茉奈様って、大切な話に他人を連れる事がないから……きっと、晃も必要なのだろう。
 でも、一体何の話よ……! わからない。


 「でも、お父様のところへ行くのよ?」

 「分かっています、茉奈様」

 ……茉奈様は、私に『茉奈様』と呼ばれるのを認めている。前妻の、お母様と親友だったというお話だし。茉奈様も大層悲しまれたそうだ。

 私も、妃海もお母様が大好きだから……まだ、茉奈様を『お母様』とは言えない。……妃海は、どうか、わからない、けれどね。

 『いいの。いつかそう呼んでくれればね』……本当に優しいお方だ。だからこそ思う。
 ……茉奈様は、何を思っているの? 茉奈様が本心をさらけ出したことは、ないと思う。少なくとも、椎名家に来てから。

 茉奈様が、私に対しても、妃海に対しても、何も変わらないのは、事実。
 そして、お父様や妃海、使用人さん達から虐げられているのに気づいているのに、その事実から目を背けているのも、事実。

 ……茉奈様の本心は、一体何なんだろう?