次の日。

 昨日、父は帰って来なかった。仕事先でトラブルがあったみたい。
 ……それにしても、濃い一日だった……。新しい執事に開口一番嫌いと言われ、妃海にはまた叱られ……。
 でも、晃には認めてもらったし、晃を認めた。……晃は、治癒魔法の使い手。……本当に、濃い、一日。


 「飛彩様、そろそろ旦那様がお帰りになられます」

 「ええ、行くわ」


 玄関付近まで行くと、ものすごい数の使用人さん達がいる。


 「……うわ、飛彩様」「なんで、ここにいるのかしらね」「本田って、お嬢様にタンカ切ったらしいわよ」「信じられないわ」


 飛び交う言葉。


 「あら、飛彩」

 「……妃海様もいらしているのですね」

 「ええ。お父様がお帰りになられるのだから。それに、“お母様”もいるみたいよ?」


 え。


 ……違うでしょ、妃海。私達にとっては、“お母様”じゃない。“茉奈(まな)”様、でしょう?
 茉奈様は、お父様の後妻、なの。


「私達のお母様は、一人しか居ない……!」


「……」


ねえ、妃海。何か言ってよ……。あなたは一体、何を思っているの?