これは、“日本”が歴史の教科書の前らへんに載るようになったくらい未来の物語。
人々はみな魔法をつかい、
魔力が全て。
魔法が強い者が優位に立ち、
魔法が弱い者が落ちぶれた。
そして、極一部の魔法が使えない者は、
存在ごと消されることも稀にある。
それは、貴族家の長女である妃彩も例外ではない。
彼女も、魔法が使えない、一族の恥。
そう、罵られてきた。
そして、一部の者しか知らぬように、存在を隠蔽されてきた。
「お前は妃海の影武者でいればいい。
それがお前が産まれた意味だ」
「コレの召し使いなんて……散々だわ」
「妃彩、ほら、消えなさいよ。
あたしの影武者なんていらないわ」
しかし、彼女の一族は、ある古い言い伝えを守るため、彼女を消すことはできなかった──。
そして、今日は、彼女が、彼女の新しい執事と出会う日。
「どんな執事さんなんだろ……。……仲良く、なれるかなぁ……」
心優しき彼女は、人の幸福を願うがあまり、
自分が不幸になってしまいました。
お願い。
あいつを、
妃彩を、
あたしの───を、
あたしにはできないから、
幸せにできる人が、
幸せにしてあげて。
「え〜……
俺が新しく執事になった本田晃です。
あ、最初に言っとくと、あんたの悲劇のヒロインぶってるの、嫌いなんで」
「あ〜……妃彩様、ムカつきませんか? あんな言われて。
旦那様と妃海様にしてやりたくないですか?」
「……妃彩、俺があんたのこと好きって言ったらどうする?」
「ピンクの胡蝶蘭……花言葉は『あなたを愛しています』」
これは、愛を知らない少女とツンデレ執事の甘い甘い復讐劇……───。