「で、練習試合には行くの?」
「え? ……なんで」
「あんな念を押すってことは、南に誘われた時は渋ったんだろ?」

練習試合というワードで、脳内が一気に慌ただしくなる。おまけに名推理まで披露されると、誤魔化す気はなくても、否が応でも向き合わなきゃいけない。

「……楓が、くるんです」
「それって今週末だよな」
「よく知ってますね」
「一応センセーですから」

そっか、とつい顔が緩む。

私は、行くのだろうか。行けるのだろうか。行きたいのだろうか。行かなくても、後悔しないだろうか。
まだ大して減っていないカフェラテを手に、ぐるぐる、グルグルと自問自答を繰り返す。

「……あのさ、行きたくないなら、またちょっと手伝わない?」

――――え。

「って言っても、美術室にある要らない物をこっちの旧校舎に移す作業だし、結局は学校に来るんだけど」

唐突に切り出された一糸先生からの提案は、まさに鎮静剤だった。

「途中参加もアリ、ですか?」
「もし手伝う気になったら、この前渡した連絡先にメールか電話入れて」
「了解です」

事務的な返事をしながら、深く頷く。

たったこれだけのことで、自分はどうしたいのか、なんとなく解った。