ぐっと力を込めて握った拳は、冷たく乾いた空気に反して、熱くじっとりと湿っているのがわかった。

「教えてよ。なんで間違ってるのはいつも私達なの? なんで、『まだ子どもだからわからない』って一言で片付けるのっ!」

悔しい。

――萩原のこと、どう思ってるんだ。
――萩原の将来を潰したくないだろ。

一度は納得したはずのことが、ぐるぐる回る。

「答えなんて最初から決まってたくせに……ほんとにそれで良いのかって、なんで聞くの……? ねぇ、なんで!?」

自分の上擦った声が一瞬で静けさに消える。なにを言っても、やっても、無力だと突きつけられる。

「……なんでっ……私の味方みたいな、顔して……それで正解だって言うの」

何日もかけて悩んで、最終的に別れを選んだのは自分だ。私が子どもだと思われる言動をしてきたのも事実だし、別れた時点で、次の誰かが現れるのも当然の流れ。

全部わかってる。わかってた、けど――


ふと、カンナから聞かされた噂が蘇る。

『嫌いで別れたわけじゃないから――』

楓は、どんな表情でそう言ったのだろうか?


「私はッ、正しい選択をしたって思ってる……。でも……別れて正解だったって、決めていいのはっ……楓だけだよ」