「だるい。……腹減った」

ソファにもたれてタバコを咥え、まずは一服。これだけで多少の事は紛れるが、1日経っていても、頭の中を占めるモノは変わらない。

――高校生の担任。
何がそんなに嫌なのかと問われたら、色々とあり過ぎてキリがない。ただ、1番大きな感情として燻っているのは、興味がない事に時間を費やす不毛さ、だろうか。

自分が高校生のころは、それなりに楽しかった。だが、当時の自分達に真剣に向き合うとなったら話が違う。
中途半端に形成された自我。“楽しい事”が第一優先の独善的な思考。それらを相手に真摯に向き合おうとしても、無駄なことは経験上分かっている。

「めんどくせぇな」

貫徹で身体が怠いのか、それとも心が重いのか。

とりあえず、タバコを消して横になる。
目を閉じて全てを放棄しようと試みるが、微睡みの“ま”の字すら訪れる気配がない。身体の向きを変えてみても効果なし。

「ああ、だめだ。腹減った」

一度自覚してしまったら、満たすまではもう眠れない。

――――ビール呑みてぇ。

ムクリと起き上がると、スウェットのズボンをスーツへと戻す。あとはシャツを着替えるだけ、だが……。
ここに置いているのは、作業用のTシャツ類と、ラフな羽織物くらいだ。頭を掻きながら悩む素振りをしてみるが、無いものはない。

3月半ばとはいえ夜はまだ冷える。上着を厚手に変えればイケるか?

自己完結の末、カーキ色のモッズコートを羽織ると、スマホとタバコと財布をポケットに詰めてアトリエを出る。
こんな格好で行ける場所となれば――。

「焼き鳥、だな」