「ふっふっふ、浪速の男を舐めたらアカンで〜?」
「は、はい、、、!」
軽い口調だが、千鶴の腕は壁に当てられ茜によって動けなくされていた。
窓硝子から外を見るともう暗い。葵は買い物に行ってしまったので千鶴はかなり焦っている。
こうなったのには理由があった。

数十分前、千鶴が茜の大切にしていたウイスキーを落としてして割ってしまったのだ。
「千鶴、、、これ楽しみにしていた酒やん」
「、、、茜がローテーブルに置くのが悪いと思う」
「は?」
和やかな気配は一瞬で消え失せ、茜の顔から笑顔が消えた。
それだけで部屋の気温が数度下がった気がした。
ヤバいと感じた時にはもう遅く、一瞬の動きで壁に押さえ付けられている。

「千鶴、俺は酒を割ったことに怒ってるんちゃうで?千鶴が謝らんかったから怒ってるんや。分かるな?」
「ご、ごめん!」
「許せんな〜」
「、、、お願い一つ何でも聞くから!」
やけくそでそう言うと茜は片眉だけ器用に上げる。そしてニヤリと口元を上げた。
あ、、、ヤバいかも、これ。
千鶴はそう察した。
「じゃあ、今週の日曜日、俺と二人きりでデートしような?」
「ヒェ、、、」
有無を言わさない黒い笑み。体術が得意ということもあって力も強く、千鶴は茜が手首を離さないと逃げられない。
「何やってんだよ、お前ら」
ドアの所で呆れたように二人に目を向ける葵が立っている。階段を上がってくる音は聞こえなかった。
葵の登場により、茜がやっと千鶴から離れてベッドに沈む。
「何があったんだよ」
「さぁ、、、」
茜の口元は少し上がっていた。