「よし!、、、こんなもんでええやろ」
茜は腰をぐーっと伸ばし、部屋を見渡した。
八畳程のフローリングの部屋にはフカフカのベッド、窓の近くには机。新しく住居を移した茜は何処かご機嫌だ。
「茜の部屋で片付いているのを見るのは久しぶりだな。あと数日すればゴミ屋敷に戻るんだろうな」荷解きの進行状況を見に来ていた葵が遠い目をしながら悪態をつく。
「ゴミ箱は一応あんねんけどな〜、、、」
そう、茜の元部屋は超が付く程のゴミ屋敷なのだ。部屋の中にゴミがあるのではなく、ゴミの中に部屋があるように感じると葵は毎度見る度に思う程に、、、。
「茜は仕事、どうするんだ?」
「ニートを極める!」ドヤ顔しながら言った茜の顔にバインダーが飛んでくるが、ひらりと(かわ)した。
「相変わらず運動神経だけは良いよな、、、」
「だけを強調せんとって!?」
「、、、早く降りて来いよ。千鶴にクッキー食べられるぞ」
「クッキー焼いたん!?葵の(ねぎら)い嬉しい〜な〜!」
気分が高揚(こうよう)し、店へと続く階段を駆け下りる茜が「俺のクッキーぃぃぃ!」と言いながら千鶴を追いかけまわすまであと数秒。