八月十日、曇り。

碧人のいない世界にひとり。

おばさんは泣きはらした顔で、さっき部屋までお礼を言いに来てくれた。

私は……なんて答えたのだろう。覚えていない、なにも覚えていない。

葬儀に参列できず、初七日(しょなのか)法要(ほうよう)にも顔を出せなかった。おばさんが涙ながらにお母さんと話す横で、私は夢を見ているような気分だった。

目を閉じれば碧人がまだいて、目を開けるといない。こっちが夢で、あっちが現実だと思った。

碧人はケガをしただけ。だってそうでしょう?

ほかの部員は無事だったんだから。

ねえ、そうでしょう?