「カラドンくーん。あたしの来月のシフト表持ってきたわー。あと下でちょっと問題がー」

 支部に常駐する冒険者用のシフト表を持って、女魔法使いのハスミンがやってきた。
 相変わらずの黒い先折れ帽子と分厚いローブ姿だ。

「あらー? 取り込み中???」

 ギルマスのカラドン、サブギルマスのシルヴィス、受付嬢のクレア。
 そしてルシウスの四人に見られて、ハスミンは首を傾げてまた出直してこようとしたが、その前にギルマスの机の上にある魔導具に、水色の瞳の目を瞬かせた。

「あら、それ随分と旧型の鑑定用魔導具ね」
「僕のスキルの詳細鑑定してたとこなの」
「! ルシウス君の!? 見たい、あたしも見たーい!」

 一緒にお魚さんモンスターと戦う同志ハスミンなら、とルシウスは頷いた。

 ギルマスのカラドンも仕方ねえなあという顔をして笑ってくれたので、遠慮なくハスミンは魔導具が空中に出力したルシウスのステータスを覗き見る。

「ハイヒューマン、魔人族、魔王の息子……うはあ、恐ろしい単語が並んでるわあ」
「ちょうど、これからスキル詳細をチェックするところでして」

 気を取り直して、サブギルマスのシルヴィスが魔導具に手を翳し、魔力を流す。
 シルヴィスに促されて、ルシウスも自分の手を翳した。


固有スキル
魔法樹脂(オリジン)
無欠(体質に適合するスキルの自動習得)


「えっ、これだけ?」
「この“無欠”ってスキルがバグの原因みたいだな……」

 スキル“無欠”の項目をタップすると、このスキルを通してルシウスがこれまでに自動習得してきたスキルがずらーり何十行にも渡って表示された。
 最初の十数行に、自然に発現したスキルとして“絶対直観(忠告)”や、魔法剣士として必要なスキルとして基本の身体強化などが並んでいる。
 そして、魔法樹脂を扱い、使いこなすための造形術や創造性に関するスキルが続いている。

 特筆すべきは、それらスキル“無欠”で習得したスキルの後に( )があり、その中に誰から習得したものかが表示されていることだろう。

 最初のうちは実の両親の名前、そして父親のメガエリス・リーストや亡母スノーフレーク・リーストの名前が続き、途中から例のお兄ちゃんカイルの名前が見えるようになる。



「ルシウス。お前、よくアケロニア王国から出してもらえたよな。普通だったら国家ぐるみで抱え込まれて秘匿されるだろ、お前みたいなのは」

 ギルマスのカラドンが手持ち無沙汰に髭を弄りながら呆れていた。
 彼はもちろん、ルシウスがここココ村支部に派遣された経緯を知っている。というよりルシウスから話を聞いていた。

「そんな難しいこと、あの王族の皆さんが考えてたとは思えないけどね。ちょうど使える奴が目の前に来たぜラッキー! ぐらいでしょ」
「緩いわー。アケロニア王国の余裕ってやつなのかー」



「あらっ、調理スキルがあるじゃない。ランクは中級!」
「やっぱりお父様から習得したスキルみたいですね。『調理スキル、ランク中級(メガエリス・リーストより習得)』」

 興味深げにルシウスのスキルをひとつひとつ見ていたハスミンと受付嬢のクレアが声を上げた。

 その中級ランクの調理スキルの項目をタップする。

 あるか? 例のスキルオプションはあるのか!?

 ルシウス以外の一同が固唾を飲んでステータス表示の画面を凝視する。


調理スキル、ランク中級(メガエリス・リーストより習得)
補足:スキルオプション・飯ウマ


「「「「あったー!!!」」」」