次の日、それからまた次の日も透は河川敷で本を読み、向日葵は透に会いに来た。
 向日葵が来ると透は読んでいた本を閉じ、彼女の心地の良い声に耳を傾ける。
 初めて会った日は驚きのあまり栞を挟まずに本を閉じてしまったが、今はきちんと栞を挟んでから本を閉じている。
 もうひとつ変わったことといえば、透と透の母親の喧嘩が目に見えて減ったことだ。今までは母からの少しの小言に過剰に言い返していた透も、一呼吸置くことを覚えた。


 生産性のない日々を送っていた透の夏休みは、まるで色がついたように彩りのあるものになった。
 一度透がわからなかった夏休みの課題を向日葵に見せたことがあったが、あいにく彼女は勉強が苦手なようで、問題の解決には至らなかった。
 向日葵は申し訳なさそうにしていたが、透は1つ彼女のことを知れたようで嬉しかったのか、穏やかに笑って「気にしないで」と首を横に振った。
 この頃には、透は向日葵に心を奪われていたように思う。