オレが守る山に、一人の女性が連れて来られた。
女性というには若く、少女というには大人びている、、、そんな子だった。
女性はオレに気付いた子だろう。そして神職によって『生き神』と崇められたということは火を見るより明らかだった。
 山に招かれた女性の名はマヨイと言った。背中まで伸びた黒髪に華奢な体を包んだ巫女服は彼女を一段と綺麗にする。
「お初にお目にかかります、マヨイと申します。この度は大変、名誉なお役目を仰せつかりました。どうぞ、よろしくお願い致します」
「、、、」
 頭を下げて静かにそう言うマヨイに、初めは可哀想な子だと思っていた。神職はマヨイを殺し、いずれ神へと仕立て上げる。
頭を上げ、オレを見る。赤みがかった瞳に映るのは希望か、絶望か、、、果たしてどちらだろうか?
「貴方が、月峰様ですか?」
「、、、ああ」
「この地を守ってくださり、ありがとうございます」
「、、、」
そうして、マヨイとオレの生活が始まった訳だが―――。
「マヨイ、、、お前はこのままで良いのか?」
「え?」
 聞けば村に夫がいるらしく、腹には子供が宿っていると言うのだ。
「、、、大丈夫です。あの人は私の自慢の旦那様ですし、この子もきっと元気に産まれてきます」
「そうか、、、」
 マヨイの朝は思ったより遅い。
何度声をかけても中々起きる気配がない。気が付けば自分で起きているが、、、。
生き神の子はオレの言葉をキき、それを神託として村の者を導く、、、呆れる程変わらない生き神と神職の関係。
「ありがとうございます生き神様。どうかこの村を末永くお守りください」
「、、、はい」
「、、、、、、」
上辺だけの感謝の言葉。どうせ儀式が行われたらじきにマヨイのことも忘れるだろうに、、、。