「入れた……」

 そのまま不法侵入に成功してしまった。どうやら私は本当に自由になれたようだ。どこにだって入れる。空は飛べないけど。
 
 目の前の階段を上ったら夏樹の部屋に入れる。年頃の男の子の部屋に入るなんて最低だ。
 悪いことをしている自覚はあるのだから。そのぐらいは考えられた。
 今日だけで二回も犯罪を犯している。ただ、私が訴えられることはない。容疑者は存在しなくて証拠がない。これは不自由だった私の最初で最後の悪あがきだから。

 夏樹の部屋の前に立つ。徐々に罪悪感が増していく。
 
 入るのはやめておこう。ただ、屋根の下にいられる安心感には負けた。きっと私を見ることができるのは夏樹だけだから廊下で寝かせてもらおう。そして、明日朝早く家を出よう。

 横になり考える。残りの数日を楽しもう、と。