駄菓子屋さんに着いた時にはもう両手がほとんど消えていた。もう、この世にいられなくなる。

 まだ、夏樹の返事を聞いてない。一方的に伝えただけでは満たされてない。このまま終わりを迎えるのは死んでも死にきれない。

 店の前に置いてあるベンチに座り、夕日を眺める。

「これが最後の景色なのか…」

 意識が朦朧としてきた中、美しいその景色を目に焼き付ける。

「渚!」

 横から夏樹が走ってきた。額が汗で濡れている。

「俺も好きだ。俺達は腐れ縁だっていい聞かせて忘れようとしてた。でも、また会えて気持ちを思い出した。俺と付き合ってください」

 その言葉で衝動的に体が動き、彼の頬に一つのキスを残していた。

「よろしくお願いします」

 叶わない約束を結び、この場の別れを告げた。一生好きでいよう。

 短かった自由の時の閉幕が近づいてくる。私が最期に見たのは夕日と君の背中だった。

「また、夏樹と出会えますように――」

 私が次に辿り着いたのは雲の上だった。