ほんの少しの物音が聞こえて目が覚めた。この駄菓子屋さんに訪れる度に邪魔していた奥の和室で寝かせてもらっていたようだ。

 体を起こし、時計を見る。時刻は午後二時になっていた。もしかしたら待っていてくれているかも。そんな期待を込めて部屋を出た。

「渚ちゃん。これ、プレゼント」

 おばあちゃんはすでに透けた右手に二つのチョコ菓子を乗っけてくれた。まだ輪郭を保っていたおかげか握ることができた。

「夏樹は渚ちゃんの体が透けているのは気づかないの。その両手が消えるまでがこの世にいられるタイムリミット。最期の最期まで楽しんできな」

 背中を押され、走り出す。最期まで夏樹と過ごしたいから。