何故こうなったかというと、少し時間を少し巻き戻さなければならない。


　そうあの日、私は血を流して道路に倒れていたであった。

　真夜中、もう少しで日付が変わろうとしている頃バイトが終わりアパートに帰ろうとしていた途中の出来事であった。

　横断歩道の前で信号待ちをしながら、ひなのは携帯をカバンから取り出し時間を確認すると、またカバンに携帯を戻す。

　「早く帰ろ」

　何故ひなのが早く帰ろうとして居るかといいうと、あと三十分ほどで前から楽しみにしていたドラマの初回放送があるのである。

　そして、手にはビニール袋を持っているのだが、これはさっきコンビニで買った鶏の唐揚げとジュースを飲んでドラマを見ようと計画していたのであった。

　青信号になったのでひなのは横断歩道を渡っていたのだが、もうスピードで走ってくる信号無視の車に跳ねられた勢いで、ひなのは宙を舞ったのだった。

　車の存在に気づいたときにはすでに車のヘッドライトがひなののことを照らしていたて、車を避けることが出来なかったのである。


　しかしひなののことを轢いた車は止まること無くそのままその車は逃げてしまった。

　要するにひき逃げされたのである。

　ひなのはさっきまで立って居た場所から遠くに飛ばされた衝撃なのか頭から温かい血が流れていくのが分かる、身体も衝撃を受けて身体中が痛みを感じる恐らく骨のどこかは折れてしまっているはずである。

　ひなのは、必死に声にならない声をあげるのだがその中でも意識がどんどん遠退いて行くのが分かる。

　「だ、だれか……」

　時間帯ということもあるのだが人通りが少なく、恐らく助からないと覚悟を決めたひなののであった。

　(私、ここのまま終わるのか。まだ二十一なのに、これからなのにまだやりたいこと沢山あるのに何で、お母さんにもお父さんにもまだお別れ言ってないのに、こんな終わりなんて嫌だよ……)　

　ひなのの瞳から涙が溢れだしてくる。

　すると、遠くから一人の背の高い人影がひなのに近づいてくるのが見えた。

　「君に決めた」

　遠退いていく意識のなかでその言葉を最後にひなのの意識が途切れたのであった。

　◆◇◆

　ひなのはゆっくりと目を開けると、最初に目に入ったのは白い天井のようなものであった。

　(私は、どうなってしまったのだろうか？)

　だが、ひなのは意識がはっきりしないなか誰かが自分の手に触る感覚を感じた。

　そして、誰かが自分のことを呼ぶ声も聞こえてくるではないか。

　「お、お母さん？」

　かすれた声でひなのは声の主に聞こえるように今出せる声量で話しかける。

　「僕は、君のお母さんではない」

　次にひなのに返ってきたのはその言葉であった。

　少しずつ意識がはっきりしてくると、ひなのは声の主の顔をみる。

　「だ、誰？」

　ひなのは思わず声をその人物に向けて驚いた声を出してしまった。

　その人物はひなのの知らない人物であったのである。

　その人物は男性で、黒いコートを着ていて、背が高くて背の割に身体が痩せている人物であり、その人物の顔色は青白く体調が悪そうにみえた。


　「こんにちは、初めまして佐々木ひなのさん」


　ひなのはその人物に名前を呼ばれると、誰か分からず怯えた表情をする。

　(何故、この男性は私の名前を知っているの？)

　これが私、佐々木ひなのと死神ゼロの初めての出会いなのであった。