翌日、部屋の扉のノックする音で目を覚ました。

なかなか開かない目をなんとか開けて、返事をする。

「はい。どなたでしょうか?」

「リリーでございます。朝の支度のお手伝いに参りました」

「今、開けますね」

ルーナは、ベッドからおぼつかない足取りで扉まで向かっていく。

扉を開くと、優しい顔をしたリリーが立っていた。

「おはようございます。ルーナ様」

「おはよう、リリーさん」

リリーさんの後ろにもう一人の女性が立っている。

「ルーナ様、こちらは、昨日お話しておりました。もう一人のメイドでございます」

メイドが近くにやってくる。

「はじめまして、ルーナ様、私はリナーと申します」

「はじめまして、ルーナと申します。よろしくお願いいたします」

綺麗な顔をしている、リリーさんに少し似ているような気がするのだか……

挨拶を終えると、リナーさんはもとの場所に戻っていき、リリーさんだけが残った。

部屋の中に戻り、朝の支度をしながらリリーさんが話してくれた。

やはりリリーさんとリナーさんは、二卵性の双子で、姉がリナーさん、妹がリリーさんだという。

そういわれると、双子のわりに顔がそっくりではない。

そして、妹のリリーさんは、魔法が使えないが、姉のリナーさんは、少しだけだが魔法が使えるのだそうだ。

服は昨日、シャルル様がくれた贈り物の服を着ている。

リリーさんが、髪をとかしてくれている。

その後に、髪を結んでくれると次に髪飾りを着けてくれた。

「終わりました。ルーナ様」

「ありがとうございます、リリーさん」

「何かございましたら、ご用を申し付けください」

「はい、ありがとうございます」

そういうと、リリーさんが部屋から出ていく。

(このあと何をしよう?)

ルーナは、考える。

(本を読む?)

それでは教会にいた時と変わらないではないか。

せっかくこの屋敷に来たのだから、屋敷の探検してみようかな?

(楽しそうではないか)

そう思いたつとルーナは、椅子から立ち上がり、部屋を出る。

廊下を歩いてみるとこの屋敷は、外から見るよりも大きく感じられた。

廊下を歩きながら、辺りを見回す。

廊下には小さな小窓がいつもあり、光が床を照らしている。

歩いていると、一枚の絵があり、その絵の前で足を止める。

不思議な絵だなぁと、思っていて見ていると、音もなく、シャルル様がいつの間にか横にいた。

「わー、驚きました。シャルル様、いつの間にか居られたのですか?」

「僕は魔法使いだからね」

まるで子供のような笑顔をみせてくるシャルル。

「もしよければ、屋敷をご案内しましょうか?お嬢様」

意地悪ぽく、シャルル様が言う。

「シャルル様、私がお嬢様なんて恥ずかしいですよ」

「そんなことはないよ。君は十分に綺麗だしお嬢様のようだと僕は思うよ」

「そ、そんな」 

シャルルがそんなことを言ったので恥ずかしくなり、ルーナは後ろを向いてしまう。

(か、顔が、熱い)

ルーナは、手で仰ぎながら顔の熱を冷ましていく。

何だか、なんともいえない気持ちになるルーナ。

「どうしたんだい。ルーナ」

「いえ、何でもございません。行きましょう。シャルル様」

その後、シャルル様は屋敷の中を案内してくださった。

二階の部屋には、小さな書庫、シャルル様の書斎、シャルル様の寝室、談話室、そして私の部屋などがある。

書庫は小さいながらも本棚が壁一面に置かれいて、分厚い本がたくさん並んでいて、小さな机と二脚の椅子が置かれている。

談話室には、長いソファとテーブルが置かれていて、暖炉というものが置かれていて、冬の寒い季節になると活躍してくれるのだという。

「これは何でございますか?」

ルーナがシャルルにテーブルに置かれている紙のような束が何かを尋ねる。

「これはプレイングカードといってこれを使って遊びをするんだよ」

「遊びでございますか?」

「また今度、遊び方を教えよう」

「ありがとうございます。楽しみにしております」

それをボード遊びというのだそうだ。

そのあとは、シャルル様の書斎も見せてくれた。

綺麗に整頓されており、必要なものを集めたというような部屋ように感じる。

「どうなさいましたか?シャルル様」

「いや、何でもないよ。ルーナ」

一階には、応接室、食堂、キッチン、エドモンドさんの部屋、リナーさん、リリーさんの部屋などがある。

応接室には、テーブルにソファが置かれている。

食堂には、長いテーブルと数脚の椅子がある。

キッチンは、使用している人のこだわりが感じられるキッチンであった。

シャルルとルーナは中庭に出るとシャルルが尋ねてくる。

「どうだったかな?ルーナ」

ルーナは、振り返るとシャルルに話し出す。

「何処も素敵で、書庫には沢山の本が並べられていたし、談話室は、始めてみた物が沢山ありました。でも特にこの中庭はとても素敵です。綺麗な花が咲いてい、心が洗われるようでございます」

「ルーナは好きな花があるのかい?」

ルーナは、少し悩んだ表情をする。

「特別これといった花は思い浮かばないのですが、青色の花は何故だが心を惹かれてしまいますね」

ルーナは、自分の目元に手を当てる。

私は、生まれながらに片瞳が青く生まれてきた。

そのせいなのか、私はいつもひとり、孤独を感じていた。

何処にいっても、恐れられ、蔑まれてきた。

仲間に輪に私だけ入れてもらえないような気持ちになっていたはずだった。

でも、ここに来てシャルル様やエドモンドさん、リリーさんにリナーさんは、私のこの瞳をみても恐れたり、蔑んだりしない。

「シャルル様」

「どうしたんだい?ルーナ」

「私はここに来れてよかったと、心の底からそう思うのです」

風が吹き、ルーナの長く美しい黒髪が揺れる。

シャルルは、その後ろ姿を静かに見守っていたのでした。