その後、シャルルは懐中時計を閉じると、先ほどまで止まっていた人々が動き出しました。

ルーナは、不思議な光景を目の当たりにしてしまい少し戸惑ってしまったが何とか気持ちを落ち着かせるように深呼吸をしました。

「用事も済ませたし、そろそろ馬車に戻ろうか」

「はい、シャルル様」

シャルルが笑顔で、振り返り馬車に乗り込んでいきます。

馬車の中、シャルルとルーナが話をしている。

シャルルが姿勢を正すと、ルーナも姿勢を正した。

「まず最初に、僕が魔法使いだったということを黙っていたことをお詫びしたい」

ルーナは頷く。

「僕は、最後まで君に魔法使いと言うことを言わずに隠すつもりはなかったということを最初にわかって欲しい。最初から、僕が魔法使いだなどと言ったら君は信じてくれないかも知れないし、怖がらせてしまうと思ったんだ。だから、家族になってから僕が魔法使いであることを伝えようと決めていたんだ。でも、君はすぐに僕が魔法使いだということを受け入れてくれた。本当に感謝しているよ」

「そんなこと…ありませんよ」

「君がよければだけど、魔法を使って早く帰るのもよいけれど、せっかくならば、魔法を使わずに、家まで帰りたいと思っているのだがどうかな?」

「もちろんです!」

しばらく馬車が道中を進んでいるとき、その道中、馬車から外を見ていると花畑が見えてきた。

ルーナが花畑を見ている様子を見ていたシャルル。

「ルーナ、近くで見てみるかい?」

「良いのですか?」

ルーナは、嬉しそうに微笑む。

「もちろん」

花畑の近くに馬車が止まると、ルーナは急いで馬車から下りる。

「気をつけないと、怪我をしてしまうよ」

走りながらルーナは返事をする。

「大丈夫ですよ。シャルル様」

そこには、辺り一面紫色の花畑が広がっていた。

「うわーあ、綺麗」

ルーナは、その花の近くに顔を寄せる。

「それににおいもいい香り。シャルル様、綺麗ですね」

「そうだね。ところで、ルーナ、その花の名前を知っているかい?」

「いいえ、知りません。何という名前の花なのですか?」

「そのはなの名前は、ラベンダーといって、料理の香り付けや薬として使われているんだよ」

「ということは、このラベンダーという花は、見ること人の心を惹き付けて、料理の香り付けや薬としても使われていていて、何でも出来る素晴らしい花なのですね」

「そうだね」

ルーナの子供らしい姿を後ろからシャルルが見ている。

花畑を見終わると、馬車に戻る。

ルーナは、名残惜しそうに時々振り返りながら花畑をみている、馬車に乗ってからもその花畑が小さくなるまでみていた。

その夜、シャルルとルーナは、宿に隣接する、土産屋に来ていた。

シャルルとルーナは、晩御飯を食べようと、部屋に荷物を置き、外に行こうとしていた。

シャルルが、土産物屋の看板を見つける。

「ルーナ、少し入ってみるかい?」

ルーナは頷く。

中に入ってみると、棚には色々なものが並べられている。

ルーナは、ハーブが並んでいる棚をみつけ、その棚を見ていた。

字は教会である程度教えてもらったので少しは読めるのである。

ローズマリー、ミント、カモミール、ラベンダー、その他にも色々なハーブが並んでいる。

小瓶に乾燥されたハーブが入っている。

こんなにも沢山のハーブがあるのだと、ルーナは思った。

ルーナは、ラベンダーの小瓶を手に取る。

これは、先ほど見た花畑の花のハーブ。

ルーナの隣にシャルルがやってくる。

「ルーナ、それが欲しいかい?」

「ですが、」

(貰ってばかりいるのに、欲しいなんて言えるはずがない)

シャルルは、ルーナの手からその小瓶を奪い取る。

ルーナが呆気に取られている間にシャルルは、会計を済ませる。

ルーナ急いでシャルルのもとに行くと、隣で申し訳なさそうに立っている。

「どうぞ、ルーナ」

シャルルは、ルーナの手のひらにその小瓶を置く。

「ありがとうございます、シャルル様」

ルーナはその小瓶を大事そうに手に持っている。

シャルルは、ルーナの方に身体を向ける。

「ルーナ、僕はね、その土地でしか得られないものがあると思っているんだ。その土地の土産を買って、時間が経ってから、またそれを見たとき、思い出として記憶される、そして僕とルーナが始めて一緒に花畑を見た、その花畑の花は何だっただろうか?それを見れば、その花畑の花はラベンダー畑だったと思い出せる、そして、そこで見た記憶は二人の記念になっていく。そう僕は思うんだ」

その後、晩御飯を食べると、宿に戻った。

夜、寝る前にルーナはシャルルが買ってくれた、ラベンダーが入った小瓶を見ていた。

机には、日記帳が置かれている。

そこには、こう書かれていた。

『今日は、シャルル様と花畑を見た。その花の名前は、ラベンダーといって色は、紫色をしている。そのラベンダーは、料理の香り付けや薬として使われているとシャルル様が教えてくれた。その後、宿に泊まることになったその近くでお土産屋さんでシャルル様がラベンダーが小瓶に入った物を買ってくれた。晩御飯を食べた。とても美味しかった』

それを日記帳の横に置くと、ルーナはベッドに入ると眠りについた。

二日目。

朝から、外が騒がしい。

何かあったのだろうかとルーナは、宿の部屋の窓から外を見る。

大勢の人が一ヶ所に集まっている。

扉がノックされる。

「ルーナ起きたかい?そろそろ出発の準備をしておいてくれるかい」

ルーナは、その言葉に返事をする。

「はい。わかりました。すぐ準備いたします」

その後すぐに、ルーナはパジャマから緑色のワンピースに着替える。

着替え終わると、トランクを持ちシャルルの部屋に向かうといっても隣の部屋なのだけれども…

扉をノックする。

すると、シャルル様が扉を開ける。

「準備が出来たんだね。外に馬車が待っているから急ごう」

一度シャルルは部屋に戻ると、トランクを持ち、部屋を出る。

「行こうか、ルーナ」

「はい、シャルル様」

階段を下り、受付に部屋の鍵を返すと、入り口に向かう。

そこには、馬車が停まっており、その馬車に乗り込む。

少ししてから、シャルル様に朝の騒動を聞いてみた。

「僕も気になったから、外に行ってみたのだけれど、どうやら通行人同士の喧嘩でそれを止めてる人や騒ぎで大勢の人がいたようだよ」

「そうなのですね。朝から驚きました。あのように大勢の人がいましたから」

「確かにあれは、驚くかもしれないね」

馬車はどんどん進む。

ルーナは、外を眺めていた。

すると、沢山の店が軒を連ねている場所をみつける。

急いで、シャルルに尋ねる。

「シャルル様、あれは何でございますか?」

「あれは、マーケットといって、様々なものが売っている店だよ。ルーナ、行ってみるかい?」

「い、行きたいです」

馬車を下りると、店が沢山連なっている。

果物、食べ物、服、アクセサリー、どれもルーナには、新鮮にうつる。

「シャルル様、本当に沢山の様々なものが売っていますね。とても楽しいですね」

「そうだね。ルーナ、気になる店は見つけたかい?」

アクセサリーが並んだお店を見つけ、ルーナはそれらの商品を手に取る。

そこで、蝶々の形をした髪飾りに目を引かれる。

「素敵」

しかし、見終えるとその髪飾りをもとに戻すルーナ。

「次に行きましょう、シャルル様」

その後もルーナは、見るだけで何も買わなかった。

すると、シャルルが口を開く。

「本当に何も買わないのかい?」

「はい、見ているだけでとても楽しいですから」

その後、マーケットを出ると近くのレストランで食事を済ませると、また馬車に乗り込む。

その日は、長い間馬車に揺られていた。

夜になり、また宿に泊まることになった。

部屋でルーナが今日も日記を書いている。

『今日は、朝から通行人同士の喧嘩があって、大勢の人が集まっていた。マーケットという場所に行った。そのには、沢山のものが売っており、果物、服、アクセサリー、見ているだけで楽しかった。また行きたいと感じた』

三日目。

ルーナは、目を覚ますと、ベッドから起き上がる。

机には、昨日マーケットで手に取った蝶々の髪飾りが置いてある。

ルーナは、その髪飾りを手に取る。

(シャルル様がくださったのね)

お礼を後でしないと、そう思いながら服を着替え始めるルーナ。

せっかく貰ったのだからと思い、ルーナはその蝶々の髪飾り髪につける。

ルーナの長く美しい黒髪にとても似合っていた。

トランクに荷物をしまい、忘れ物がないか確認する。

ルーナは、確認が終わると一度、部屋を出て、シャルルの部屋に向かう。

扉をノックする。

「はーい、今開けます」

ガチャ。

「ルーナか、今呼びに行こうと思っていたところだったのだよ」

「そうなのですね。シャルル様、この髪飾りありがとうございます」

ルーナは後ろを向くとシャルルに髪飾りを見せる。

「いやいいんだよ。ルーナに似合うと思って、でも実際ルーナが着けてみたらとても似合っているね。ああ、それとルーナあともう少しで、準備が終えるのだけど」

「でしたら、今から部屋に戻って荷物をもって参ります」

「いやそれならば、後でルーナの部屋に迎えに行くよ」

「はい、分かりました。それでは部屋でお待ちしておりますね」

会話を終えると、シャルルは部屋と扉を閉めた。

ルーナは、部屋に戻るとベッドに腰かけ、窓の外を見る。

今日の空は青く透き通っている。

もうすぐでシャルルの屋敷がある水の都、フルスに近づいているのを感じるルーナなのでした。

扉をノックする音がする。

ルーナは足早に扉に向かう。

「はい」

そこには、シャルル様が立っていた。

「待たせたね、ルーナ行こうか」

「はい」

ルーナは部屋にあるトランクを持ち、部屋の入り口に向かう。

ルーナは部屋の扉を閉める。

ガチャ。

また馬車に乗り込む。

長い長い道のりを馬車は走って行く。

ルーナはこの道中でのことを思い出していた。

その土地でしか味わえない食べ物や景色をシャルルと共に楽しむことが出来た。

こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。

シャルルといると、何故だか笑顔になってしまう。

シャルルは窓の外を見ていた、視線を感じたのかルーナの方を見る。

「どうかしたかい?」

「いえ、何でもありません」

「そう」

シャルルは窓の外をまた見直す。

そしてルーナも窓の外を見る。

「疲れただろう。眠るといい」

そういうと、シュルルは席を移動するし、ルーナに肩を貸してくれ、寄りかかり眠りにつく。

不思議な夢を見た。

何処かの草原のようだ、遠くには家々がみえる。

一人の男性がこちらに近づいてくる。

どうやら近くには、女性がいるようである。

何か楽しそうに話している、何を言っているのだろうか。

顔を見ようとするが、眩しく光っていて、顔がよく見みえない。

なんだろうこの夢は……

「ルーナ、ルーナ」

シャルル様の声がする。

「もう少しで着くよ」

シャルル様の肩から起き上がり、窓の外を眺めると、沢山の人々が歩き、馬車などが行き交っている。

「うーあ」

思わず声を出してしまった。

「どうだい?驚いたかい?見慣れないものばかりだろう」

「はい、私が住んでいた場所では見たことのないものばかりです」

「そうかい」

目的地に着くまで、ずっと窓から外の景色を眺めていると、馬車が突然が止まったのです。

シャルルの方を向くルーナ。

「ルーナ、着いたよ」

そういうと、馬車のドアが開きシャルルは下りていきます。

ルーナもシャルルの後に続いて下りると、目の前に古びた屋敷が建っていたのでした。