ルーナは、目を覚ますと急いで服を着替えると髪を梳かし部屋を出る。

とうとうクリスマス当日の日がやってきた。

ルーナは、今日は朝早くからキッチンに立っている。

早く作っておかなければ皆にバレてしまうからである。

早速、材料を準備していくもう何度もやってきたので慣れた手付きで準備していく。

小麦粉、塩、バター、卵、砂糖、レモンと材料を準備する。

器に小麦粉とバターを入れて混ぜていく。

砂糖も入れていく。

生地が出来上がった。

今のこの時間にはオーブンには入れず、夜になる頃にオーブンに入れる予定である。

それまで冷たく冷えた場所に置いておくことにした。

「これで大丈夫なはず」

ルーナは、使った調理器具などを洗い片付けを終えるとキッチンを後にする。

今日は、食堂でクリスマスパーティーのようなものをする予定である。

もう街はクリスマスの前からクリスマスの装飾などが飾られ始め、近くなるとさらにクリスマスムードが増していっていた。

クリスマスの日になる前からこの屋敷の談話室にはクリスマスツリーや装飾がされている。

ルーナは、自分の部屋に戻ると椅子に座り引き出しから日記帳を出す。

ペンを持つと、書き始める。

『今日は、いよいよクリスマス当日。朝早くからアップルパイを作った。皆さんがどのような反応をしてくださるのだろうか。今からとても楽しみである』

続きは、夜に書くことにした。

ルーナは、ページをめくり日記の内容を読み返す。

『今日は、初めてアップルパイを作った。料理を作るというのは大変なことだと知った。エドモンドさんのアドバイスもいただき、手伝っていただき感謝することばかりである』

日記帳を閉じると、ルーナは立ち上がり窓の外を見ると雪が降っており、朝よりも雪の量が増えたように思える。

「雪、積もるかしら」

ルーナは、あくびをする早く起きたせいなのか少し眠気が襲ってくる。

少しだけ睡眠を取ることにしよう。

ルーナは、ベッドに横になった。

◆◇◆◇

誰かがルーナの部屋の扉のノックする。

しかし、ルーナの反応はなく扉を開ける。

扉を開けたのは、シャルルであった。

部屋の中に入るとルーナは眠っているようでベッドの側にいくと、ルーナの髪を優しく撫でる。

シャルルのその瞳はとても愛おしそうに壊れ物を扱うように包み込まれてしまいそうにルーナを見つめている。

「疲れたのだね」

そう言うと、シャルルは立ち上がり部屋を出ていく。

シャルルは談話室の部屋に行くと残りの仕上げを魔法で終わらせる。

シャルルは願う、どうかこの日がルーナにとって良い日になりますようにと……

◆◇◆◇

ルーナが目を覚ます、時計を見るとおおよそ二時間程度眠っていたようだ。

ルーナはベッドから起きると、ベッドを整える。

クリスマスパーティーまで時間があり、何をして時間を潰そうかと考える。

うーん、何をしようかしら

一度少しだけ外に出て街のようすでも見てこようかしら

そうと決めたら、ルーナは部屋を出てシャルルのもとに向かうことにした。

廊下を歩き、書斎の部屋の前で足を止める。

扉をノックするとシャルルの声がする。

扉が開かれ、シャルルが立っている。

「どうしたんだい。ルーナ。さあ中へどうぞ」

ルーナは、書斎の部屋に入っていく。

「実は、シャルル様にお願いがございまして、少しの時間でかまいませんので街の様子を見に行きたいのですが……」

シャルル様は少し悩んでいる。

「でも今日は、多くの人がもいるだろうし…」  

「屋敷の近くだけでも駄目でございますでしょうか?」

ルーナは、シャルルに目で訴えている。

「仕方がないなぁ、少しだけだよ」

そう言うと、シャルルはルーナの手取ると魔法で瞬間移動をする。

「わあ」

ルーナは、思わず声を出してしまう。

着いた場所は、路地裏で服装も暖かそうな上着をいつの間にか着ている。

その路地裏から出ると、シャルルが歩きその後をルーナがついていく。

そこは、屋敷から数メートル離れた場所であった。

店には、クリスマスらしいものが売られている。

見ているだけで楽しい気分になってくる。

「どうだい。ルーナ」

「楽しいですし、素敵でございます」

ショーウィンドウに並べている商品がキラキラと輝いている。
 
「素敵」

声に出てしまった。

でも、本当に素敵すぎる。

一通り、店を見ると再び路地裏に向かい、シャルルと手を繋ぐと魔法で屋敷に戻った。

戻るとそこは、先ほどまでいた書斎だった。

シャルルにお礼を言うと、ルーナは部屋を出ていく。

ルーナは、廊下を歩きながら思い出していた。

幸せそうに歩く人々、キラキラと輝いているショーウィンドウの光。

余韻に浸りながら部屋まで戻る。

部屋に戻ると、本を手に取り読み始める。

本の物語はというと、ある夜の日に運命的に出会った、男女が織り成す一日限定の恋の物語。

ページにはこのように書かれていた。

『君は知っているかい?ヤドリギの下で口づけを交わすと幸せになれるということを…』  

く、口づけ……、あの植物にはそんな話があったのかと驚くルーナ。

何故だか顔が熱くなるのがそれが治まると再び本を開く。

『いいえ、存じ上げませんでした』

男性が女性の手を引く寄せると、口づけを交わす。

その様子をヤドリギが二人を見守っていた。

ルーナは、突然本を閉じてしまった。

何ともいえない気持ちになる。

その後、ルーナは本を閉じるとぼーっと、外の窓を見つめながら時間を過ごした。

扉のノックする音で意識をはっきりと取り戻す。

どうやらいつの間にか眠っていたようで、外はすっかり暗くなっていた。

椅子から立ち上がり、扉を開くとそこには、リリーさんが立っていた。

「ルーナ様、お食事の準備が出来ました」

「はい、今行きます」

ルーナは、リリーのあとに続いて歩く。

食堂に着くと、いつもよりも豪華に装飾が飾られている。

シャルル様もやってくると、いよいよクリスマスパーティーのはじまりである。

テーブルには、サラダや魚料理、肉料理など前菜からメインディッシュまでどんどん豪華な料理が運ばれてくる。

どれもこれも美味しく、シャルル様とそして皆と共に楽しむ。

「とても美味しいです」

「嬉しいお言葉でございます」

エドモンドさんが答える。

しばらくするとルーナは、お手洗いにと席を立つとキッチンに向かう。

数時間前に作っておいたアップルパイを焼くためである。

まだ、デザートの時間まであるので時間は十分ではないかと思う。

いつもよりの食事の時間よりもゆっくり食事をしているためである。

せっかくならば出来立てを食べてもらいたいと思ったのである。

キッチンに着くと、オーブンはすでに余熱が終わっていた。

もしかして、エドモンドさんがやってくださったのかもしれない。

心の中でもお礼を言いつつ、冷たいところに置いておいたアップルパイをオーブンに入れる。

入れ終わると、時間を確認するこの時間になったらまたキッチンに来なければと思いながら、キッチンを後にする。

食堂に戻ると、残りの食事の続きを始める。

食事を終えると、談話室に移動する。

その前にキッチンに寄る。

オーブンを開けると、ちょうど良く焼き上がっている。

透明のケーキスタンドに入れる。

アップルパイを持ちキッチンを出ると談話室に向かっていく。

食器などはすでに談話室の棚に完備されているので持っていく必要はないのである。

すでにシャルル様やリリーさん、リナーさん、エドモンドさんは談話室に移動していた。

ルーナは、入り口の近くにあった木製のキッチンワゴンにアップルケーキを置く。

リリーがルーナに話しかけてくる。

「どうなさいましたか?」

「実は、皆さんにクリスマスの贈り物の変わりにアップルパイを作ってみたのですが、もし良ければなのですが、召し上がっていただきたく思いまして…」

ルーナは恥ずかしそうにリリーに告げるが、リリーはとても嬉しそうな顔をしてくれる。

ルーナは、人数分のアップルパイを分けるとトレイに置いていく。

シャルル様が座っているテーブルに向かっていく。

「シャルル様、実は、アップルパイを作ってみたのですが……」

シャルル様は、驚いた表情を見せてくれる。

「ルーナ、アップルパイを作ってくれたのかい?一口、いただいてもいいかな?」

「もちろんでございます」  

シャルル様は、アップルパイを一口食べる。

「お、美味しい、ルーナ美味しいよ」

幸せそうな表情をしてくれている。

「皆さんも是非食べていただけたら幸いです」

リリーさんやリナーさん、エドモンドさんもアップルパイを食べていく。

「「美味しいでございます」」

「美味しい、美味しいでございます」

「ありがとうございます。素敵な贈り物でございます」

ルーナもアップルパイを食べていく。

美味しい、よかった失敗せずに作ることが出来た。

ルーナは、皆の表情を見てみる皆幸せそうな表情をしている。

とても嬉しい気持ちになるルーナ。

作ってよかったと心から思える言葉をくれる、そして表情をしてくれる。

その後は茶を飲んだり、ゲームをしたりして遊んで過ごした。

最後にクリスマスツリーのしたにあるプレゼントを開けることになった。

シャルルは、ルーナに箱を渡してくれる。

「これは何ですか?」

「開けてみてごらん」

ルーナは、箱を開けるとその中には、ブレスレットが入っており、月の形のパーツが装飾されている。

「綺麗で素敵ございます、シャルル様」

シャルルは、ルーナにブレスレットをつけてくれる。

ルーナは、腕につけてくれたブレスレットをみる。

本当に素敵で綺麗で、ずっと眺めていたい気分である。

「喜んでもらえてよかったよ」

リリーさんやリナーさんやエドモンドさんは片付けをするため部屋を出ていく。

ルーナはクリスマスツリーの前に移動する。

「ルーナは、知っているかい?ヤドリギの伝説を…」

「ヤドリギの伝説?」

ルーナは、その話を本を呼んで知っていたが知らないふりをする。

するとシャルルは、ルーナの手を掴むと自分のほうに引き寄せる。

バランスを崩したルーナは、シャルルの胸に飛び込んでいく。

「シャルル様……」

ルーナは上目遣いにシャルルを見つめる。

バランスを整えようとシャルルの体から離れようとするがシャルルは離してくれない。

「どうなさいましたか?シャルル様」

シャルルは、ルーナの顔に触れてくる。

「ヤドリギの下で口づけを交わすと結ばれる」

シャルルの顔が近づいてくる、ルーナは思わず目を瞑る。

「冗談だよ。すまないね」

ルーナは目を開けると、シャルルは意地悪そうな顔で微笑んでいる。

ルーナの顔は真っ赤になり、急いで下を向く。

なんでこんなに胸がドキドキするのだろう。

もしかして、まだあの紅葉の力が消えていなかったのだろうか。

ルーナは、居ても立っても居られなくなり部屋を出ていく。

シャルルは、一人談話室になってしまった。

「意地悪をし過ぎてしまったかな?」  

ルーナは、部屋を出ると扉に寄りかかり、胸を押さえる何故こんなに胸がドキドキするのだろうか。

治まらないこのドキドキをどう止めれば良いのだろうか。

ルーナは、気付きはじめていたのです。

自分の気持ちに……

この関係性を……

しかし、ルーナはそれを言葉にするとは出来なかったのでした。