アデルが最後の数字を呟いたと同時に、彼の姿は消えていた。
(あれ? アデルは何処に?)
猟師上がりの王宮兵団兵士・ルーカスは思った。
すると即座に「ぎゃぁぁぁぁあ!」という悲鳴が正面から聞こえる。
一瞬で距離を詰めて、山賊の体を大剣が貫いていたのだ。
(なッ!? 早すぎでしょう!)
アデルとその山賊は距離にして十メルト程離れていた。
それを一瞬で詰めたのだ。
「速ッ……一瞬のうちにあんな遠くまで?」
カロンが口をぽかんと開けて言った。唖然として固まっている。
それはルーカスも同じだった。アデルの速さは同じ人間だとは思えなかった。彼であれば、弓など使わずに野生動物を仕留められるのではないか。そう思わされた。
「ルーカス! 危ない!」
カロンの声で我に返ると、前には斧を振りかざした大男がいた。
「おのれぇ! こうなったらてめぇらだけでも殺してやる!」
血迷った山賊だ。
彼は反対岸にアデルが行っている事を良い事に、カロンとルーカスに襲い掛かってきたのだ。
「うわっ!」
ルーカスは間一髪のところで斧をかわした。
そこで、緊張から解き放たれて、体が動き出す。そこからはいつも通りだった。距離を取りながら背の筒から矢を取り出し、弦にあてがい、狩猟の時と同じ様に矢を放つ──慣れしたんだ動きだった。
「あがっ!」
ルーカスの放った矢は山賊の脳天を貫いていた。
そのままずるりと山賊は崩れ落ちて、絶命した。
「あ……殺し、ちゃった……」
ルーカスに殺す気はなかった。どこか動けなくして、捕えようと考えていた。
しかし今、彼は人生で初めて人を殺してしまったのである。
「ルーカス、なにボ―ッとしてるの!? こっち援護して!」
カロンの言葉にハッとすると、彼もも無我夢中で剣を振るっていた。
彼も実践は初めてだ。おそらく、ルーカス同様にわけがわからない状態だろう。
くらくらする頭を振りながら、ルーカスはカロンの背を狙う山賊に向けて、矢を放った。
そこから、カロンとルーカスの戦場はそのまま乱戦へとなっていた。しかし、二人共本来は優秀な戦士である。落ち着きを取り戻し始めてから、山賊程度には遅れを取らなくなってきた。
無我夢中で戦っているうちに、人を傷つける事への躊躇はなくなっていた。そうしなければ殺されるのは自分だからだ。詰まるところ、それは狩猟とほぼ同じだった。違いは、相手が人間か、動物かであるだけである。
それに、正面からの戦いはそれほど長くは続かなかった。
アデルが頭目のギムを一瞬で屠った時点で戦いは終わった。そこからは散り散りになって逃げようとする山賊達を追討するだけだった。何人かの山賊が投降したので、その賊達は捕縛し、馬車の荷台へと移す。それだけの作業だった。
こうして、彼らの王宮兵団としての初めての仕事は、無事終わったのだった。
(あれ? アデルは何処に?)
猟師上がりの王宮兵団兵士・ルーカスは思った。
すると即座に「ぎゃぁぁぁぁあ!」という悲鳴が正面から聞こえる。
一瞬で距離を詰めて、山賊の体を大剣が貫いていたのだ。
(なッ!? 早すぎでしょう!)
アデルとその山賊は距離にして十メルト程離れていた。
それを一瞬で詰めたのだ。
「速ッ……一瞬のうちにあんな遠くまで?」
カロンが口をぽかんと開けて言った。唖然として固まっている。
それはルーカスも同じだった。アデルの速さは同じ人間だとは思えなかった。彼であれば、弓など使わずに野生動物を仕留められるのではないか。そう思わされた。
「ルーカス! 危ない!」
カロンの声で我に返ると、前には斧を振りかざした大男がいた。
「おのれぇ! こうなったらてめぇらだけでも殺してやる!」
血迷った山賊だ。
彼は反対岸にアデルが行っている事を良い事に、カロンとルーカスに襲い掛かってきたのだ。
「うわっ!」
ルーカスは間一髪のところで斧をかわした。
そこで、緊張から解き放たれて、体が動き出す。そこからはいつも通りだった。距離を取りながら背の筒から矢を取り出し、弦にあてがい、狩猟の時と同じ様に矢を放つ──慣れしたんだ動きだった。
「あがっ!」
ルーカスの放った矢は山賊の脳天を貫いていた。
そのままずるりと山賊は崩れ落ちて、絶命した。
「あ……殺し、ちゃった……」
ルーカスに殺す気はなかった。どこか動けなくして、捕えようと考えていた。
しかし今、彼は人生で初めて人を殺してしまったのである。
「ルーカス、なにボ―ッとしてるの!? こっち援護して!」
カロンの言葉にハッとすると、彼もも無我夢中で剣を振るっていた。
彼も実践は初めてだ。おそらく、ルーカス同様にわけがわからない状態だろう。
くらくらする頭を振りながら、ルーカスはカロンの背を狙う山賊に向けて、矢を放った。
そこから、カロンとルーカスの戦場はそのまま乱戦へとなっていた。しかし、二人共本来は優秀な戦士である。落ち着きを取り戻し始めてから、山賊程度には遅れを取らなくなってきた。
無我夢中で戦っているうちに、人を傷つける事への躊躇はなくなっていた。そうしなければ殺されるのは自分だからだ。詰まるところ、それは狩猟とほぼ同じだった。違いは、相手が人間か、動物かであるだけである。
それに、正面からの戦いはそれほど長くは続かなかった。
アデルが頭目のギムを一瞬で屠った時点で戦いは終わった。そこからは散り散りになって逃げようとする山賊達を追討するだけだった。何人かの山賊が投降したので、その賊達は捕縛し、馬車の荷台へと移す。それだけの作業だった。
こうして、彼らの王宮兵団としての初めての仕事は、無事終わったのだった。