秋の大江山はまさに宝箱だ。山の幸はいくらでも手に入る。栗やら茸やら餓鬼やら…あ?

 なーんでこんなとこに人間の子供がいるんだ。齢は大体五か六ってとこか?髪の毛ボサボサで服もだらしないな。

「久しぶりの人間!けど、骨と皮しかないような小さいですね。こんな小さい状態で生まれるなんて相当な外れだこりゃ。」

 星熊がそう言ったのに少々驚いたが直ぐに理解した。妖怪や鬼には成長の概念がない。妖怪は基本的に人の恐怖心などから生まれてそれっきりだからな。よっぽど長く生きてる妖怪(やつ)でもなければ、そもそも子供を知らなくてもおかしくはない。

「捨てられたみたいですね。人間の世界も弱いやつは切り捨てられるなんて。」
「さしずめ食いぶち減らしか税収から逃れるために親が追い出したんだろう。中途半端に群れるからこうなるんだ。人間は責任も仲間意識も足りないやつらみたいだな!」
「頭…やけに人間に詳しいですね。もしかして普段俺たちから隠れて人間の生活見てるんじゃないですか。」

ギクッ

「さて、こいつどうするか。食べるにしてはいくらなんでも細すぎる。冬備えの足しにもならん。」
「まったく…わかりやすく話すり替えないでください。」

 星熊たちに説教されている間、人間の子供は一言も発しなかった。まだ状況を理解できていないのだろうか。それとも言葉を話せないのか。

 なんであれ、今の私はまるで星熊に躾されているようでストレスが溜まる。そんなことを思っていると、私は一つ妙案を思いついた。

「そうだ躾だ!こいつを手懐けて人間を襲わせるんだよ!オンミョージも人間には手を出せない!人間が犬とかいう獣を飼って狩りしてるのを真似てやろう!」