澪side



私は、幼なじみの橋本瑞生くんに恋をしている。



好きになったのは、多分初めて会った時。



小さい頃の瑞生はすっごく可愛くて……あ、今ももちろん可愛いよ!?



それでね、当時の私は、あんなに頬っぺたもちもちで目がぱっちりな子に初めて会って。



まつ毛の長さもあって、可愛さと綺麗さに一目惚れしたんだと思う。



それからと言うもの、私はいつだって瑞生と一緒だった。



でも、数年前から、瑞生は私とあまり遊んでくれなくなった。



特に学校にいる時。



大きくなって、可愛いだけじゃなくかっこよくもなった瑞生。



そんな瑞生はきっと、私のことを幼なじみとしか思ってなくて、私以外の異性の目を気にしているんだと思う。



でもそれで瑞生と距離が出来るのは嫌だったから、私は瑞生に嫉妬させようと考えた。



昨日だって好きな人にフラれたって言ったけど、私の好きな人は瑞生だから告白なんて誰にもしていない。



そうやって嫉妬させたら、俺の幼なじみだ、っていう独占欲から徐々に好きの気持ちが芽生えちゃったりなんて?するんじゃないの?



……とか、思ってたんだけど。



今まで何回試しても、瑞生は全然嫉妬なんてしてくれなかった!



それどころか、嫉妬していそうなちょっとの素振りすらも見られなくて。



やっぱり幼なじみのことは幼なじみとしてしか考えられないのかな……?



なんて凹みながら、今は学校の廊下を歩いている。



昼休憩で、みんな教室でお弁当を食べたり、談笑を楽しんだり。



私は、1回にある自動販売機にジュースを買いに向かっている所。



私たち2年生の教室は3階で、瑞生たち1年生の教室は2階にあるから、ジュースを買うついでにちょっと瑞生の様子を見に行ってみよう。



そう思ったけど、やっぱり行かなければよかった。



瑞生が、クラスメイトらしき女の子と、楽しそうに笑って話していたから。



あの女の子、可愛いなぁ……



私とは大違い。



やっぱり、瑞生もああ言う子と話した方が楽しいのかな。



胸が痛い……



嫉妬してるの、私の方じゃん……



廊下に佇んでそう気づくと同時に、もう1つ重要なことに気がつく。



……あれ、待って。



私、瑞生があんなふうに笑ってるの、見たことないかも……



最近の瑞生は、昔に比べてだいぶクールになり、笑ったとしてもあんなに明るく笑わない。



私には見せてくれないのに、その子の前ではいつもそうやって笑ってるの……?



そう思うと、悔しさや嫉妬に押しつぶされそうになる。



好きな人がいるならそう言ってよ……それなら諦めがついてたかもしれないのに。



瑞生のバカ……っ



私は泣いているところを誰にも見られないために、足早に自動販売機へ向かった。