「そのようなことどうでもよかろう。生まれたときからの遊び友達ではないか」
「いくら赤子のころからの幼馴染とはいえ、お前は近衛騎士団の司令で、わたしは聖龍騎士団の副指令。しかもこの場は星光宮内だ、それなりの礼儀は持って頂きたい」
 エメラルダは頑として引かない。

「これだから女って奴は厄介な・・・」
「なにか仰られましたか」
 エメラルダの凛とした瞳で睨まれたブルースは、背筋を伸ばした。

「サウス=マクシミリオン将軍、殿のお姿をお見かけなさいませんでしたでしょうか」
 わざとらしく、堅苦しいいい方をする。

「知っておられれば、是非にもご教示頂きたい」
 そういうブルーに対して、エメラルダがニヤリと笑みを浮かべた。

「さあ、知っておるには知っておりますが、最低でもあと一(カルダン)はブルースに居場所を教えるなとのお言い付けなので、お答えすることは出来かねますが」
 エメラルダが澄ました顔でそうこたえると、今度はブルースの表情がみるみるうちに変わってゆく。

 まるで茹で上げたボルボル(蛸に似た頭足類で、淡水に棲息する十二本の足を持つ軟体水棲生物)と見あやまらんばかりに、真っ赤に顔が染まっている。

「それでは殿は俺がお探ししておるのをご存じで、知らぬ振りをしておられるのか」
 ブルースがエメラルダに詰め寄る。

「あんな大声で探し回れば、誰だろうと気付かぬ者のいる筈がなかろう。辺り一帯に聞こえておる。――して殿に用とは急ぎなのか」
「急いでいるからこうして俺自らが探し回っておるのだ。楼桑国からの急使が先程到着した。その使者が問題なのだ」
 ブルースが一気に捲し立てる。