少年が守り役のダリウスから起こされた時には、すでに城内には火の手が回っていた。
 少年が眠る公子宮の寝室内にも、扉の隙間から白煙が床を這うように侵入している。

「若さまお起きくださいませ。ほれ、しっかりと目をお開けくだされ」
 見慣れたしわ顔が緊張した面持ちで、あどけないふっくらとした少年の頬を軽く叩いた。

 ゆっくりと目蓋が開き、氷蒼色(アイスブルー)のきれいな瞳がクリクリと光った。


「どうしたのダリウス、もう朝なの」

 いくぶん気だるげで不満そうな澄んだ声で、少年は老人にきいた。
 老人は問いには答えず、そそくさと用意していた服を着せ始める。
 眠たげに目をこすりながらも、少年はダリウスに急かされて身支度を済ませた。

 寝室から連れ出された少年は頭からすっぽりとマントをかぶせられ、数人の兵に守られながら騒がしく物々しい雰囲気の城内をなるべく目立たぬように歩いてゆく。