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 退院して、これからの生活のことを考え始めていた時、とんでもない連絡があった。それは唯一残されていた文芸誌の連載打ち切りだった。まだ最終回を迎えていなかったが、強制終了させられたのだ。悪いことは続くというが、余りの酷さに担当者を恨んだ。
 表向きの理由は作家の静養のためというものだったが、真相は違うに決まっている。担当編集者から見捨てられたのだ。作家としてのわたしの能力を見限ったのだろう。わたしの入院を知って、これ幸いと打ち切りを決めたに違いない。それは自業自得と言われても仕方がないものではあったが、到底受け入れられるものではなかった。だから担当者に何度も掛け合って再考を促したが、「会社としての決定ですから」という言葉が(くつがえ)ることはなかった。
 大変なことになった。連載中止は毎月の安定した収入が途絶えることを意味していた。単行本の増刷予定がないわたしにとって連載は唯一の収入源だったが、それが断たれるのだ。目の前から完全に光が消えたも同然だった。次から次と襲いかかる悪魔のような仕打ちに自らの運命を呪った。
 …………
 運命? 
 いや、違う。運命ではないし、誰のせいでもない。金儲けにうつつを抜かして仕事をおろそかにした罰が当たったのだ。ビギナーズラックを実力と勘違いした間抜けなバカ者が墓穴を掘っただけなのだ。いや、それだけではないのかもしれない。父の期待を裏切ったことも影響しているだろうし、才高家のご先祖様の怒りに触れた可能性だって否定できない。どちらにしても自業自得なのは明らかだった。
 そう思い至ると、思い切り落ち込んだ。自分の価値が無になったようで立ち直れそうもなかったし、病み上がりということもあって気力はマイナスを彷徨(さまよ)い続けた。
 そんなわたしにガールフレンドが追い打ちをかけた。
「借金どうするの? 私が貸した分を先に返してね」
 慰めてくれるどころか、恐ろしい顔をして返済を迫られた。
「なんとかする」
 顔を背けて呟いた。