ふと見ると、宮殿の出口には、お妃達がたくさんいて、直ぐに出る事は難しかった。

人がいなくなってから、出るとしよう。

私は庭へ降りると、咲いている花を見つけた。


「あなた達ともお別れね。」

花は何も言わない。

でもそれが逆に落ち着くのだ。

「また新しい妃が、あの部屋へ入るわ。そうしたら、仲良くしてあげてね。」

風に揺られる花を見ると、うんと頷いているようだった。


その時だった。

「花に話しかける人を、初めて見た。」

振り返ると皇太子が立っていた。

「あなたも父の側妃の一人ですか?」

「はい。」

「見ればまだ若いように見えるけれども、何年宮殿に?」

「……10年です。」

なぜ皇太子がここにいるのか。

父の代わりに、見送りに来たのか。