「ああ。」

私を連れて行こうとする大臣を、皇帝は止めた。

「ですが、皇帝は全く私を愛してはくれませんでした。私の10年は何だったのでしょう。」


私は悔しかったのだ。

ただ皇帝の寵愛を待ち続けた10年が、無駄になってしまうのを。


「桃花。貴女にはすまない事をした。ただ私の身体も一つしかない。分かってくれ。」

「分かりません。」

「桃花。」

「どうして私を、愛してはくれなかったのですか?」

皇帝は私を抱き寄せてくれた。

「本当にすまない。桃花は私の事を、愛してくれていたのだね。」


そうなのだ。

私はこの人に、愛されたかった。

あの本の中の主人公のように、見つめ合って抱きしめ合って、口付けを交わして。

連理の枝のように、過ごしていきたかった。