「そう言えば、誕生日に一緒に過ごしていたのは、桃花だったかな。」

私の身体はピクッと跳ねた。

「……はい。」

嘘をついても、仕方がない。

それは事実だし、何よりもこれでお別れなのだから。

「楽しかったね。忘れないよ。」

「ありがとうございます。」

私は最後に、皇帝に笑って見せた。


「では、次のお妃。」

ああ、とうとうお別れなのだ。

これでもう、皇帝と会う事は二度とない。

「桃花?」

立ち上がろうとしない私の肩に、皇帝は手を添えた。

「さあ、次が待っているから。」


これだけ?

10年この人の愛情を待ち続けて、たったこれだけ?

「皇帝……」

自然に涙が出て来た。

「私はこの10年の間、皇帝に愛される事だけを望んで生きてきました。」