私はあっという間に、皇太子に用意された新しい部屋へと連れて来られた。

「広い。」

今までの部屋とは、比べ物にならないくらいだ。

こんな部屋を与えられるなんて。

「あの、困ります。」

私は騙されているのか、それともからかわれているのか。

「お気に召さなかった?」

私の顔を覗くその瞳は、前皇帝に似ていた。

「いえ、私はまだ皇太子様のご寵愛を受けてはおりませんし。」

「今から受ければいいだろう。」

「ええ?」

私は顔が赤くなっているのが、分かった。


落ち着いて。

まだ決まった訳ではないのだから。


「皇太子様、やはり私は……」

断ろう。

やはり私には、誰かの寵愛を受けるなんて、似合わない。

私は荷物を持つと、部屋を出ようとした。

「待て。」