「桃花様。皇太子様のお妃になるのですか?」

「いや、これは……」

慌てて否定しようとすると、皇太子が私の肩を抱き寄せた。

「そうだよ。僕の新しい妃だ。」

ええっ⁉

まだ返事をしていないのに⁉

「前皇帝のお妃を、側妃に迎えるのですか⁉」

「何か問題があるのか?」

使用人はガタガタと身体を震わせた。

「いえ、恐れながら側妃達は、後宮が無くなった後も、他の主人を迎える事はないのが通例でございまして。」

「あくまで通例だろ。例外もある。」

私は皇太子をそっと見た。

皇太子って、こんなにもはっきり物を言う人だっただろうか。


いや、私はあくまで前皇帝の側妃だったのだ。

皇太子の噂など、耳にもできなかった。


「さあ、桃花。行こう。」

「あっ……」