しばらくすると、皇太子が私の部屋へとやって来た。

「ああ、大人しく戻ってくれたんだね。」

「はい……」

それは次期皇帝の言う事には従うでしょ。

しかも今週末には即位式があって、彼は晴れて皇帝になる。


でも確か、皇太子には皇太子妃がいるし、確か子供を産んだ妃もいたような。

なのに何故、私みたいな女を妃にしようと思ったのだろう。


「さあ、桃花。新しい部屋を用意しよう。」

「ああ、部屋なら今まで使っていた部屋で……」

「ここは私の部屋からは遠い。もっと近くがいいだろう。」


皇帝の部屋の近く!

それって、寵愛が深い証しでは?


「待って下さい。私はまだ、妃になるとは……」

そう言うと、すぐそばで物音がした。

振り返ると今まで使えていた使用人が、驚いた顔をしていた。